【ISF05】ミリオンSSゴウドウボンの感想ブログ

タイトル通り、ISFで頒布されたミリオンSSゴウドウボン上下巻の全作品感想を残しておきます。

最後に

 全作品の感想を投稿したものの、結局「評論家ぶりたい素人の駄文」でしかないのは間違いないです。全ての感想が正しいどころか上手く読み込めていない部分も多く存在するでしょう。それでもこれを読んだ私はそう感じたのです。4000円という同人誌の相場を考えてもやはり高い金額のこの本に、素直にそう感じたのです。

 

 おおまかに駄作、凡作、良作の三段階で評価しましたが凡作はともかく「駄作」という評価をされるような作品が4000円を払った結果のこの本に存在している……それもかなりの割合で存在していることはとにかく期待を裏切られたとしか言えません。参加者が38人。おそらくミリオンライブにおいて重要なキーワードの一つである「サンキュー→39」を集めようとした結果なのでしょうが、人数を重視するあまり質をおろそかにし過ぎていなかったでしょうか。あるいは、「やればできる」にもかかわらず真面目に「お金を取る作品」としての意識が足らずに創作してしまった方もいらっしゃったのでしょうか。なんにせよ、4000円に見合うほどの作品は片手で数えられるほどだという印象を受けました。

 

 物語を表現する媒体というのは小説以外にも漫画や映像、音楽などさっと思いつくものでもこれくらいあって、それでも小説……文字媒体を選んだ以上「文字である意義」が大切だと思います。漫画に比べて物語自体のボリュームを膨大にさせやすいこと、地の文を用いることで心理描写を密にさせられること、小気味よく、言葉遊びやリズムを作りやすいこと。それを活かせている作品もやはり少なかったと思います。これは条件とかではなく個人的な願望でしかないとわかっていますが、例えば所謂「絵が描けないから小説を書いた」そんな風に感じられる程度の文章力の作品も多く、もっと文字にしかない魅力を見出してほしかったです。SSだから軽い気持ちでいい、などと考えているとしたらただただ悲しい。他のジャンルに比べてそういった作品が多いとも前々から感じていましたが。

 

 そして何度も前述してきましたが表紙と中身の乖離が酷い、という点も気に入りません。作品を完成させた後に表紙を完成させるのが難しいことはわかりますが、それならば作品の制作前にメインキャラクターを作者から聞いて回ったりすればある程度時間が確保できたのではないでしょうか。少なくとも、本書で登場回数が飛びぬけて多い桃子、ジュリアが表紙に存在していないことにはショックが大きいです。本当に、重ね重ね言いますが4000円を取るということを考えて制作をしていたのでしょうか。「斬新なものを企画している」ことに酔って、読者のことを忘れてはいなかったのでしょうか。何もかもがお粗末で、そう邪推せずにはいられませんでした。

 私はこの本を読んで、大好きなミリオンライブというコンテンツのキャラクターの物語で泣いたり笑ったりしたかったです。良作も確かにあったとはいえ、読み終わってこんな気分になったことが無念でなりませんでした。以上です。

下巻

 ギャグ系統などの作品は下巻に収録、というコンセプトのようです。こちらも上巻と同じく毛色様々という感じですね。

 こっちの方が全体的に質は悪いですが。

 表紙は亜利沙はほとんど出てきていないので、代わりに朋花や琴葉が描いてあってほしかったですね。

 

如月千早のなか☆よし大作戦」

 二次創作にありがちな「作者は面白いと思っていた」の典型ですね。冒頭が本筋に全く関係もないのにやけに尺を取ってるのも気持ちが悪いです。中の人ネタが多いですが、内輪ネタにすらならない惨状。冷ややかな目で読む以外にありません。

 中学生の書いた文章並みにパロネタも多く、落ちも弱く、引っ張ったわりにこれか……と思わずにはいられません。上下とも、冒頭の作品としての役割をもう少し考えて欲しかったです。駄作。

 

「最上静香の穏やかな一日」

 特に面白いというわけではないという点では先ほどの作品とお文字ですが、それでも上手いこと落ちをつけられているので全体を通すとそんなに悪くない、という印象。そんなに長くもなくテンポがいい。無難に凡作。百合っぽさがちりばめられているので人によって評価は上下しそう。

 

「仮初の姉妹」

 百合作品、みらしずものですね。全体的に特に起伏があるわけでもなく、たださらさらっと進んでいって適当にまとまったという感じ。つまらないわけでもないが別にときめいたりハッとするわけでもない……という印象。どこにでもありそう、と言えばいいのか。凡作。

 

「無銭飲食列伝~佐竹飯店編~」

 元ネタはライトノベルの名作「イリヤの空、UFOの夏」ですね。私も好きです。でもこの作品はダメです。元ネタの良いところを削ったり劣化させたりしているだけの作品となってしまっています。

 原作は三人称ということや、周りの客も挑戦している人物を心配したり畏怖したりしてその定食の異様さを表現していたり、そもそも本人たちももっと追い詰められる(中華丼に顔を突っ込む。調味料をビン丸ごとぶちこむ。鼻血を出す)そしてその果てにお互いへの対抗心、本心をむき出しにするというつくりになっています。そんな一方でこの作品は大して追い詰められているわけでもなく(原作と比べて、とも言えるが)普通に完食します。原作のような切迫感もなく、特に達成感がないため落ちも弱く。とにかく面白くない。美奈子が定食屋だからとりあえずパロっておこうという雑な考えが透ける。駄作。

 

「天然階級」

 オチにいたるまでもつまらないがオチも弱い。「で?」となること請け合い。笑いどころもなければ意外な展開もなく、淡々とキャラクターのボケを解析していきキャラクターに代弁させただけの駄作。

 

「青葉美咲、初めてのお泊り」

 冒頭からしてセリフが多すぎて情景がまるで分からない。律子がいるのかと思ったらいなかった。オチまでがあまりに淡々と仕事を片づけていくだけの展開が続いて流石にうんざり。合間合間に差し込まれている小鳥さんによる「百合」推しもくどくてイライラしてきます。無駄な要素だけで構成されているようなストーリー。オチもしょうもない。日常系と言えば聞こえが良いけれど、何も起こらないことと日常系を同一視するのはただの甘えです。駄作。

 

「紙の旅人」

 不自然なまでにご都合主義が多すぎます。朋花がファンでもない相手に威圧感で圧倒するくだりが一層ストーリーのリアリティを崩壊させていくようでした。そして、結局何を伝えたかったのが最後まで分からない。何の感想もわかないような無味無臭な作品。駄作。

 

「猿と猫と夢のような話」

 ホラーな世界観をとりつつ茜ちゃんが大活躍する作品。グリマスの頃の茜ちゃんのカードをいくつも踏まえて恐怖の世界から抜け出す、といったストーリー。茜ちゃんへの愛を感じられてとても良い。茜ちゃんらしさ、そしてプロデューサーがお客さんとしても茜ちゃんとふれあいたいという願いも、現実においてプロデューサーという名のファンである私たちの関係性と重なっていて素敵なつくりでした。良作。

 

「血椅子」

 ホラー小説には明るくないので多くは語れないけれど、オチはドキッとさせられました。一方でオチ以外は全く怖くないのは筆力の問題なのか意図のあるものなのかわかりませんでした。凡作。

 

「ミリオンアーマーマイティウインド」

 アイマスでやる必要ありますか? 元ネタのガチャのキャラをメインにするならともかく、百合子を主役にしてる時点で劣化ヒーローズとしか感じられません。不自然な展開(どぶの素人の百合子に大物の敵の相手を任せるなど)も目立ってやりたいことを読者のことも考えずに自己満足で詰め込んでいるという印象。そして面白くもありません。駄作。

 

「アイドルヒーローズライジングX(以下略)」

 アイドルヒーローズイベ複数の前知識が必要な作品ですね。まあ、それ自体はダメというほどではないです。ところでマイティレッドやらイエローやらという名称って公式にありましたっけ、聞いたことがなかったです。

 作品の展開自体はシリアスなはずですが、一々ギャグを挟んでコミカルになっているので奇妙な作品。どちらかに振り切った方がいいと思います。ブルーシーリングは外見の描写が一切なかったので美咲をモデルにしてるのだと気づくのに時間がかかりました。男だと思っていたので。

 そんなシリアスともギャグともわからない中で闇の力をうんぬんという話をされても公式で似たような展開していたな、としか思えませんでした。上の作品と同じく空回りした自己満足の作品。駄作。

 

「桃子を抱きしめ続けるだけ」

 出てくるキャラクターがみんな可愛い。ストーリーは特に起伏もないけれど、最後に少しときめきを感じられるラストが用意されてるので小気味いい印象を受ける。まあ凡作。

 

「幻のメロンソーダ

 とにかく文章が綺麗で繊細。琴葉の面倒くさいまでの生真面目さとよく調和していていて話全体の雰囲気が良い。文章力だけならば上下巻合わせてずば抜けていると思います。

 百合作品で、扱っているのはことめぐ。同性愛をモラトリアムの気の迷いなのかどうか、という題材をうまくさばけていると思います。最後にタイトルにもある比喩表現をうまく組み込めていて、劇的な展開はなくともうまくまとまっている良作。

 

「北川麗花の特別な夢」

 読後感が良い意味で何とも言えない。ハッピーなのかバッドなのか解釈に寄り添うな結末が素晴らしい。一人称視点がくるくると入れ替わるけれども特に問題にはなっていない作品。麗花さんらしい、ある意味の解釈をしっかりと作品に仕立て上げている良作。

 

「借り物アクトレス」

 百合作品、しずしほですね。展開はあまりにも露骨すぎて先が読めるけれども、特に問題もなくこなしているのでうまくまとまっています。無難に、オチも軽くときめくようにまとめている凡作。

 

「硝煙と情炎」

 お金出して売る以上、最低限の文章作法を押さえておいてくれませんか? 句読点すらないのは流石に理解できない。なんの前触れもなくストーリーがアイドルヒーローズになるところは流石に失笑しかできない。単純に大いなる実力不足。上下巻合わせてもぶっちぎりでクオリティが低い。ストーリーも無理があるが、それを表現することにも失敗しているので作者と読者でテンションの差が激しく、心が冷めてしまう。駄作にも劣る。

 

「日刊横山奈緒・特別編」

 改行が気になるけれどネット上だとよく見る表現だからそれは良いでしょう。ただつまらない。というかネタが大阪? の路線を詳しく知らないといけないのか何一つ伝わってこない。コメントに困る駄作。

 

「けじめ。」

 もう少しボリューム多めにして、プロデューサーの気持ち悪さを描写しておけばオチで一層のカタルシスが生まれたのではないでしょうか。それはともかくストーリーの骨格自体は良いと思いました。凡作。

 

「orion」

 あっさりしすぎている気がして少し勿体ないように思えます。ただ、星空を二人が各々解釈する、というテーマ自体キラキラしていて素敵です。雰囲気もいい、まあ凡作。

 

「雨ざらしの心に」

 これも随分とあっさりめ、作者さんの特徴なのかもしれませんね。親と喧嘩した志保と、仲が悪くて喧嘩すらしないほど冷え切った静香の描写が上手くできていてよかったです。特別面白いわけでもなく、凡作。

 

「怠惰。あるいは天空橋朋花の憂鬱」

 特に何も伝わってこない。つまらなくもないが面白くもない。淡々と、あっさりと話が終わる印象を受けます。駄作。

 

「問、徳川まつり」

 設定が少しわかりにくい。昔事故にあったことを前半でほのめかしておいてもよかったように思えます。文章力が足りていないのか何とも淡白な作品。徳川まつりの解釈も個人的にはあまり好きになれない。駄作。

 

「おうし座の稜線をなぞって」

 昴の家で金魚を飼っているという設定は初耳でした。

 作品自体は結局何がしたかったのか、と。特に伝えたいことがあるようにも思えない作品。まとめかたもキャラクターに説明させ過ぎていて、雑にまとめようとしているという印象。駄作。

 

「これまでの幸せとこれからの未来を」

 百合作品、みらしずですね。

 同性愛における障害を取り扱っている作品。しかしキャラクターが三十路に近いのに一切大人びていないように描写されているのは残念。喧嘩の下りも含めて幼すぎるように思える。プロポーズとエピローグの場面の転換も雑、唐突過ぎて読後感がもやもやする。駄作。

 

「ことめぐエレと次のライブ」

 あまりに何もないストーリー。淡々と適当に文章を消化しただけに感じてしまいました。これを読んで何を感じろというのか、空虚過ぎる。駄作。

 

「地球儀にない国」

 セリフが多いですね。もう少し百合子の内面を詳細になぞった方が話に説得力が宿ったような気がします。特に、表題の曲に作品のほとんどを依存しているからこそ、この作品自体にも魅力がないとどうしようもない。曲にあやかっていることに甘えているだけの駄作。

 

「Litte World」

 Litte って調べても分からなかったのですが何語ですか? 誤字ですか?

 短い出来事を何回も収録して一本の話にしている作品です。設定自体は悪くないはずが一つ一つの話があまりにつまらなさすぎる。特に何が起こるわけでもなく、だらだらと続いていくので退屈でした。パロネタや内輪ネタ(他作者の名前を出す)ところは読んでいて恥ずかしくなりました。もっと読者のこと考えてくれませんか?

 一応オムニバスのようなものをしたかったのでしょうが、あまりに強引すぎてカタルシスも説得力もない有様。あとエレナの口調に違和感。駄作。

 

 これで全作品終わりですね。上巻に比べて下巻は百合が多かったのと……何より微妙な作品が多かった印象です。

上巻

 上巻はシリアスな作品がメインで構成されています。題材も異性、同性問わず恋愛ものやアイドルの内面を見つめていく作品、公式の深く語られていない設定を自分なりに妄想した作品など多種多様なジャンルが存在し、作者の個性が出ていると言えるでしょう。

 下巻より上巻の方が全体的にマシです。

 表紙に描かれた可奈は上巻には出番がありません。出番の多い桃子、ジュリアが描かれていて欲しかったです。

 

「遠響」

 一人称小説なのに短いページ数で何回語り手を入れ替えているんですか? 一人称を使うと決めたらデメリットも含めて飲み込むべきでは? 素人小説にありがちで痛々しい手法、好きにはなれませんでした。

 しかもせっかく一人称を使ってるにもかかわらず男の方に感情移入が出来ない。魅力も感じられない。二次創作はキャラクターを間借りしているからこそ、多少魅力的に描写できなくてもなんとかなるがオリジナルキャラではそれは通用しないと知ってほしい。そんなキャラにジュリアがキスしてもなんとも複雑な気持ちになってしまいました。

 ただ、解散を決めるときのあっさり具合だけは心地いい。全体的には駄作だけれどそこだけは評価できます。

 

「クレイジーシザーズレディ:アフターウォー」

 ……アイマスでやる必要あります? 特別アイドルヒーローズの設定を生かせてるわけでもなく、男に至ってはただの一般人。上述した通り特に感情移入できるわけでもなく、魅力もないキャラクター。それなのに朋花にはあっさり信用される展開にはご都合主義を感じないではいられません。彼は最後、身体に大きな障害を負う結末を迎えますがこれすらも魅力の無さを誤魔化すため、無駄に悲劇的にしてそれっぽくしようという雑な意図が伝わってきて気持ちが悪かったです。駄作。

 

「明日へ翔る偶像理論」

 紬の話かと思っていたらただの脇役だった。

 これを読んだ人はおそらく皆似たような感想を抱くと思います。でも可愛く描けているので良いということで。上二つと違ってオリジナルキャラの造形はうまくできていて、ピアノをやめる動機など人間らしくて良いですね。

 山場の、歌織さんの歌を聞いて感動する。無難な展開でそれ自体が駄目というわけではないですが溜めが足りてなくてあっさりしすぎている感想。全体としてはまとまってますね。まあ良作。

 

「風の色は何色ですか」

 先に評価しておきます。良作です。上下巻合わせても一番これが面白いと思います。

 ファンレターの差出人が目が不自由であると推理する展開はなかなか強引ですが、そこを除けば特に問題なく面白いです。「風の戦士」というネタにされがちなワードもうまく拾いつつ、百合子らしい文学的なストーリーはお見事。

 

「環状キーボード」

 ジュリアが別の事務所にいたりと、何かと原作とはパラレルな世界の作品。正直その設定が必要だったか、とは思いますが明確な「ライバル」のようなものが必要だったということかもしれません。

 伊坂幸太郎のような、最後一点に収束してカタルシスを生むタイプのオムニバス作品。手回し発電機のセールスマンと、電源を持たない路上ライブマンの静香が合わさりライブをする展開、とてもいいと思います。ラストの自分から列車を移動するというのも印象的で良いですね。

 ただ手回し発電機のセールスマンという設定、苦しくないですかね。ともかく良作。

 

「星、届かずとも」

 百合作品ですね。少ないですが上下合わせていくつかありました。これはみらつば、ですね珍しい。

 冒頭自体は悪くないと思います。ただ、未来が翼の背中を押すことになるようになった動機もよくわからないのはちょっと……。

 全体の尺がライブ後に偏り過ぎてて読んでいてテンポが最悪。そして最後の最後のシーン、露骨なメタファーと強引な心変わりになんとも違和感が拭えませんでした。駄作。

 どうでもいいですけど未来も翼も表紙にいないのでちょっとかわいそう。

 

「大人になりたい女の子」

 リアリティのある女社会のねちねちとしたいやらしさが上手く表現できています。ほめるところはそれだけですね。

 読み終わった後、「で?」となることでしょう。起承転結、必ず守れという類のものではないにしろあまりにしょうもない話。駄作。

 

「モモコとリリコ」

 これも、まあまあ「アイマスである必要ある?」という作品ですがしっかりと語り手の視点から桃子を見つめているからそこまでアイマス感の不足を感じませんでしたね。ネームドのオリジナルキャラが多く出てくるので、せめてマネージャーくらいはもっと無名の、無色のキャラにしてもよかったかもしれない。

 学校生活の面倒くささなどをうまく切り取れていたと思います。友人に啖呵を切るあたりの展開は強引な気もしますが、全体的にはまあ良作。

 

「日が落ち、月がのぼるように」

 千早が可愛かった。

 作品全体として率直にあまり面白くない。オチが冒頭からして読めているせいかもしれませんが、なんとなく退屈。千早をはじめ、キャラクターが生き生きと「らしさ」をもった会話を繰り広げているのは良いと思いました。凡作。

 

「plz forgive my work」

 表現したいことは伝わるものの別に面白くはない。でも(純粋な笑顔で)を連発する技法は面白かったです。最初読んだときはチープだと思いましたが、手っ取り早く効果的に狂気を伝えるにはいいかもしれませんね。

 悲劇のヒロイン、というシチュエーションが作品全体を良作っぽい雰囲気にしている気がする。まあ、凡作。

 

「うみみとあねね」「シスター・コンプレックス」

 二つの作品合わせて評価しますね。前半だけだったらしょうもなさすぎて駄作ですが、後半で一気に作品の印象を裏返す展開は中々いいと思います。

 ただ、前後半通して駆け足気味というか、前半にもっと詰めておけば裏返すときにもっと勢いがあったのではないでしょうか。凡作ですね。

 

「都内美術館・ディモナイ・ダレア展」

 グリーのミリオンライブサービス終了を意識した作品です。それを知らないと本当に中身が空っぽでしょう。分かっていてもほぼ空っぽですが。

 架空の芸術家の架空の作品を延々と描写し続けるものの、読者としては上手く伝わってこないとしか言えません。作品のほとんどがそれで閉まられているのは辛いものがあります。最後はそれっぽくまとめてましたね。駄作。

 

「ファンファーレが聞こえる」

 同じジュリアについてでも冒頭の作品よりわかりやすく、しっかりと「物語」として成立してる作品。語り手のプロデューサーを合理的で納得しやすいキャラクターにしつつ、ジュリアのライブを聞いて感情に突き動かされる、と王道なストーリーラインを満たせている。一番「アイドルマスター」をなぞっている作品かもしれない。良作。

 

 

「桃色の研究」

 オムニバス、と言えばいいんでしょうか。前述した作品と違ってそれを断言できない程度には話の軸がまとまっていないと言いますか……。あまりに軸に絡まない無駄な描写も多すぎて、結局何がしたい作品だったのかと肩透かしな印象。駄作。

 

「聲」

 これもサービス終了を意識した作品ですね。これもやりたいことは描けているとは思いますが別に面白くはない作品。グリマスへ余程入れ込んでいたプレイヤーだったりしたのならば、感想は変わるかもしれません。個人的には駄作。

 

 上巻は以上ですね。

 いわゆる「Pドル」ものがほぼなかったのは意外でした。

 冒頭から微妙な作品が並んでいるのは何とも度し難く、全体的に見てもこれらと表紙絵一枚で2000円に相当する満足感は得られないと思われました。

 

はじめに

 ISF05で頒布された「ミリオンSSゴウドウボン」 Twitterでも話題になったこの本、なんといっても最大の特徴は上下巻に分割したにもかかわらず上下ともに辞書並の厚みを持ったそのビジュアル。価格は4000円と強気ながらも無事に完売したようですね。まさに大成功、と言えるでしょう。

 

 そんな本書ですが、ネット上で検索してもなかなか作品に対する感想が発見できませんでした。まあ同人誌の感想なんて大量に売ったところで大して集まらないのは常識、だから気にすることはない……と考える方もいるでしょう。特に、本書を実際に買ったことのない人たちは。

 

 ともかく、このブログでは本書に収録された作品を二回に分け、全作品に対して個人的な感想と評価をしていきます。

 不快に感じる部分があったらブラバでも晒し上げでも何でもしてください。

 最初に一つだけ……どうして出番がほぼない娘が表紙に描かれていたり、複数の作品でメインキャラとなっている娘が表紙に描かれていなかったりしているのですか?